2012年05月11日

院長より〜他科が知っておくべき泌尿器科疾患

gremz


以下、講演の内容をまとめてみました。具体的な薬品名を活字にすることには抵抗を感じるため、薬品名の記載は講演時よりかなり割愛しています。

踏んではいけない地雷編
1小児の腎盂腎炎:小児が3回以上腎盂腎炎に罹患した場合、膀胱尿管逆流症を疑い必ず専門医を受診させてください。膀胱尿管逆流症は小児透析導入原疾患の3.6%を占める疾患です。治療方針を決めるためには、膀胱機能検査、DTPA scintigram、DMSA scintigramが必要です。
2小児〜若年期の急性陰のう症:原疾患としては精巣上体炎が多いのですが、精巣捻転との鑑別は困難です。精巣捻転の場合、8時間以内に手術をしなければ精巣が壊死に陥るとされています。時間との戦いになりますから、すぐに小児の手術ができる施設へ紹介してください。
3高齢者の尿閉:「自排尿がなく下腹部膨満」だけが尿閉の訴えではありません。むしろ、頻尿や尿量減少を訴える患者さんの方が多いようです。安易に抗コリン薬等を投与せず、必ず残尿量をチェックしましょう。

よくある症候論編
1血尿:血尿診療ガイドラインによれば、生命を脅かす病変は無症候性顕微鏡的血尿症の3.9%に、同じく肉眼的血尿症例の20.7%に発見されるとされています。したがって、肉眼的血尿症例は専門医紹介をお勧めします。ちなみに、顕微鏡的血尿症例に対して当施設では、尿中細胞診(false negativeが30%程度なので2回提出、できれば早朝尿)と腎・膀胱USを行い、尿蛋白陽性症例には腎炎の血液検査を追加しています。
2男性の排尿困難:α1-blockerによる射精障害(勃起はしても射精しない)は、患者からは訴えないものの意外と多い副作用です。尿道弛緩作用が強い薬ほど頻度が高い傾向にあります。例えば、シロドシンは、性生活を送っている患者には避け排尿困難の強い高齢者に積極的に使用するなど、α1-blockerの選択にもコツがあります。
3トイレ頻尿、尿失禁等の過活動膀胱:抗コリン薬を投与する前後で必ず残尿量をチェックし、100ml以上であれば投与は中止しましょう。β3-agonistのミラベグロンは優れた薬ですが、MRが訪問するまでは専門医向けの薬だと思ってください。

夜間頻尿編
報告によると、高齢者が最も困っている下部尿路症状は男女ともに夜間頻尿です。原因として過活動膀胱は意外と少なく、睡眠障害と夜間多尿が多いようです。24時間の排尿記録をつけてもらえば原因は容易に特定できます。昼夜問わず一回排尿量が少なければ過活動膀胱、夜間のみ少なければ睡眠障害、一回排尿量が正常で一日尿量が2000ml以上なら夜間多尿(正確には多飲多尿)です。
1睡眠障害によるもの:高齢になるとメラトニンの分泌量が減少して眠りが浅くなります。中途覚醒しトイレで光刺激を浴びることで、メラトニン分泌量がさらに低下します。このため、一度トイレに起きると以降の眠りは極端に浅くなります。就寝前ではなく中途覚醒時に短時間型の睡眠薬(できれば口腔内溶解錠)を投与するのが効果的です。
2夜間多尿によるもの:加齢に伴うカテコラミンの分泌異常、ADH分泌日内変動の消失、覚醒時に生じる下肢の浮腫により、高齢者では夜間の尿産生量が増加します。さらに「水分を多く摂取すると血液がさらさらになる」と信じて多飲多尿に陥っている高齢者が多くみられます。水分を過剰摂取しても血液のviscosityは変化しないというevidenceはありますが、血液がさらさらになるというevidenceは存在しません(脱水は別)。日本人の死亡ハザード率は夜間尿回数の増加に伴い有意に上昇すると報告されています。水分の過剰摂取の推奨は、寿命を縮めている可能性があります。
3過活動膀胱によるもの:よくある症候論編の3トイレをご参照ください。
 
以上です。


posted by クランベリー at 08:58| Comment(0) | TrackBack(0) | Dr.さとうから | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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