2012年10月17日

スタッフから 第34回信州排泄ケア研究会

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第34回信州排泄ケア研究会の講演を聞いて
H24年9月15日信州大学で行われた第34回信州排泄ケア研究会に出席しましたのでご報告させていただきます。今回はNPO法人 日本コンチネンス協会の牧野 美奈子さんの講演でテーマは「高齢者・認知症の排泄ケアの技とコツ」です。

認知症とは・・・
脳の神経細胞(組織)の障害によって成人以降に発症する疾患の総称です。主な症状は記憶障害(脳の神経細胞の障害で起こる知的な働きの障害)で、その後に様々な知的能力の低下(見当識障害・行為障害・認知低下・判断力低下・健忘失語・失算・失書)などが起こると言われています。進行に伴い様々な不都合(生活の支障)がおこると周辺症状(BPSD=行動・心理症状)が見られることもあるそうです。

認知症高齢者の排泄障害の特徴は・・・
記憶障害、見当識障害、判断力低下などの認知症状と加齢に伴う排泄障害(前立腺肥大・腹圧性尿失禁・頻尿・夜間頻尿)が重なっているため、実態が把握することが難しいそうです。また、認知症の排泄ケアについて明確な根拠のある手法が確立されていないことから介助する人によってケアに差が出てしまうのが現状です。

認知症高齢者の排泄ケアのコツは・・・
その方の「情報収集」をして「分析」をしてから「ケア計画」をすることです。
排尿記録や排便記録を利用してその方の現状や生活レベルを把握することで適切な介助につなげることができます。ケア計画までの考え方の例をまとめてみました。

尿回数が多く、尿漏れも多い → トイレに行く時間が一定 → 行動療法

                → 尿量も多い → 水分摂取量が多い → 水分制限

                → 尿量は少ない 右斜め下
              膀胱炎や高齢者排泄障害の可能性を考え医師に相談する
尿回数が多いが尿漏れは少ない 右斜め上


* 行動療法には@一定の時間で誘導する方法(定時排尿誘導)、A毎食後・おやつ後など生活習慣のパターンで誘導する方法(習慣化排尿誘導)、B尿意の確認やトイレ誘導を行い、成功した場合は賞賛(強化)をする方法(排尿自覚刺激行動療法)がある。
[例] 尿回数・尿漏れが多い施設利用者。膀胱炎症状(排尿時痛・残尿感など)はなく、水分摂取量も多くないので排尿記録を確認した際、毎日6時―10時―12時―14時―18時―22時の時間帯に尿漏れしていた。→利用者の排尿時間に合わせてトイレ誘導する(定時排尿誘導)

上記は一部の例ですが、排尿記録や行動記録をしっかり取ることで認知症の方の排泄障害は改善できる可能性があるそうです。ただ、記録は1人ではできないので、チームに協力を求めてチャートしてもらうことが大切です。そのためには、チーム全体が目的意識を持つことが重要だと感じました。日々の看護記録や介護記録では評価できにくいので、各施設や病院で排尿記録や排便記録の表を作成して記録することをお勧めしていました。

今回の講習を受けて私自身が感じたことは、記録の大切さです。何に重点を置いているのか、観察項目を統一しているのか、チーム全体で確認してケアしていくことでより個別性のあるケアにつながっていくと感じました。牧野さんのようにプロ意識を高く持って仕事することは素晴らしいと思います。また、機会がありましたら参加したいです。ありがとうございました。

以前の研究会の報告書も併せてどうぞお読み下さい。
http://continence-clinic.seesaa.net/article/57717354.html
http://continence-clinic.seesaa.net/article/106734996.html
http://continence-clinic.seesaa.net/article/161752703.html
http://continence-clinic.seesaa.net/article/225890113.html
posted by クランベリー at 15:58| Comment(0) | TrackBack(0) | スタッフから | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする