gremz
院長より
最近ブログが犬ネタばかり との批判が一部にあるため、アカデミックな内容を載せてみます。クリニックの看護師に興味を持った事例をまとめてもらいました。読んでみると、医師による理詰めの文章とは違った患者さんに寄り添った内容になっており、私もたいへん勉強になりました。このシリーズは不定期で継続していきたいと思います。

〜仙骨部帯状疱疹により尿閉をきたし間歇自己導尿で排尿管理をすることになった事例〜
事例紹介:64歳、男性
既往歴:なし
内服薬:アーチスト・フルタイド・バナン・タリオン・ユリーフ
主訴:尿閉
現病歴:6/26から尿閉となり6/27初診。尿閉となるのは今回が初めて。6年前から排尿困難は軽度あり。6/23から突然排尿困難の増悪。他院よりユリーフを処方された。
検査所見:
超音波検査:前立腺体積は24ml 水腎なし。 導尿量 400ml
PSA値:0.6ng/ml
膀胱鏡:後壁頂部よりに隆起している部位がある 粘膜面は正常
尿道:屈曲は強いが尿道狭窄なし 前立腺部尿道の狭窄は強い
膀胱機能検査:
蓄尿期:初発尿意92ml、最大尿意139ml、蓄尿機能、尿意は正常
排尿期:生食追加するが、膀胱収縮なく自排尿できず
治療の内容:
前立腺肥大症による尿閉であると思われましたが膀胱機能検査を施行したところ、低排尿筋圧で自排尿できず、排尿筋収縮障害が認められました。また、臀部の痛みがあり検査前日、皮膚科を受診したところ、仙骨部の帯状疱疹と診断されていました。以上により、仙骨部帯状疱疹による神経因性膀胱と診断され間歇自己導尿管理となりました。
看護の実際
間歇自己導尿の指導
当クリニックの『自己導尿のしおり』に沿って指導しました。自己導尿をする際の条件は、@尿意時導尿 A夜間導尿は尿意次第 B1日尿量制限なし、でした。この症例の方は、身体面精神面も自立しており“自分で導尿をする”ということへの不安よりも“再び尿が出なくなったらどうしよう”という不安の方が強いようでした。そのためか自己導尿の受け入れも良く手技もスムーズに習得されました。渓流釣りが趣味のようで、「自己導尿なんて、とてもいいことを教えてもらった!これで安心して山へ行けます」と笑顔でおっしゃったのが印象的でした。
その後の経過
排尿は自己導尿で問題なく過ごされ、5週間後には帯状疱疹も完治。尿貯留が十分あれば自排尿が可能となり7週間後には導尿が不要となりました。自排尿後の残尿測定では100ml。自己導尿を中止して1ヵ月後の診察では、残尿もなく治療終了となりました。
評価
患者様のADLや年齢などアセスメントしたときに、自己導尿ではなく“膀胱留置カテーテルの挿入”という選択枝もあるかもしれません。今回の自己導尿指導は原疾患もはっきりしている、一時的な導入でした。原疾患が除去されれば自排尿が可能となる見込みから、正常な膀胱収縮能を保持するためにも、また患者様のQOLを保持するためにも自己導尿は有効であったと思います。