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私がほぼ毎朝視ている情報番組で時々漢方薬の特集をしています。西洋医学とは対極に位置付けられる漢方ですが、当院でも処方しており一般的に幅広く用いられる治療薬です。
漢方薬は植物の草根木皮を中心に動物由来の物や鉱物などの天然物(生薬)を2種類以上、決められた分量で組み合わせて作られています。「この生薬をどうやって調達するのか?」がテレビを視ていた私の疑問でしたが、その答えを提示して頂ける機会がありました。
漢方薬の原料となる生薬の殆どが中国で栽培、生産されているのだそうです。そうです!中国産の農作物でできていると事を私は知りませんでした。生薬のうち、殆どの漢方薬に含まれる甘草(かんぞう)という植物があります。日本では甘草のほぼ全量を中国の乾燥地帯に自生する野生種に頼ってきました。グリチルリチン酸という成分を含有していて甘み成分や、痛み止め等としていも用いられている需要の多い植物なので、乱穫による甘草の枯渇が懸念されるようになりました。土地の砂漠化が進み日本に大量に飛散する黄砂の原因にもなっているのだそうです。環境悪化が問題視されるようになると、中国政府は野生種の甘草の採取制限に乗り出しました。レアアースやレアメタルと同様に輸出を規制したために国際的な争奪戦へと発展する可能性のあるレアプラントになってしまったのです。
そこで日本の企業は考えました。安全性に不安が残る中国産の生薬に依存するのではなく、日本国内で安全な植物を栽培できないだろうか・・。
国内の幾つかの企業が甘草を人工栽培できる技術システムを探しあてました。財政破綻した自治体に大きな工場を作ったことで、近隣住民の雇用促進にも繋がりました。震災の影響を受けてしまった土地にも工場を建てる計画があるそうです。地方の産業振興の一躍を漢方薬が担っているのです。今後、国内で多くの生薬を調達できるように開発が進められています。
日本国内で安全に管理された農作物から、日本人が安心して服用できる薬が作られる・・。医薬の上での地産地消なのだと学びました。