2007年04月11日

Dr.さとうから 膀胱機能検査

聞き慣れない検査かと思います。正式には尿流動態検査(urodynamic study)といいます。膀胱に水を入れながら膀胱の圧力を測る検査で、尿の出が悪かったりもれてしまう方、夜尿症の子供など、排尿障害の診断においてたいへん重要な検査です。さらにレントゲンを併用することでより高度な診療をすることができます。
困ったなー
信州大学泌尿器科は、排尿障害の診断・治療に関して世界のトップレベルです。当クリニックは個人経営の小さなクリニックですが、信州大学と同等の膀胱機能検査設備を持っています。開業する際、この設備を導入するか大部迷いました。重要な検査とはいえ設備を整えるには500万円以上必要です。1人の検査に1時間を費やし(3分診療だと20人分の時間!)、検査で得られる料金は2600〜7750円と、経営的には全く採算があいません(本人負担は1〜3割)。しかし、開業後半年を経過した今、この高価な設備を導入して良かったと思っています。

理由その1 自信を持って診療ができる。
開業する前は信州大学で排尿障害の診療・研究をしていました。そのお陰で、排尿障害のほとんどは経験と知識で診断できるようになったと自負しています。しかし、きちんとした検査をしなければ診断できない患者さんがほんの一部ですがいらっしゃいます。すべての患者さんに対して責任を持った診断をするために、この設備は不可欠だと思っています。


理由その2 学ぶ姿勢を持っていられる。
排尿障害の診断・治療はまさに日進月歩です。検査結果を解析するために、最新の論文を探し出して読む必要があることも希ではありません。常に最先端の知識を持つ自覚をこの設備は与えてくれます。


理由その3 患者さんが増える(この辺から経営的側面が入ってきます)。
東信地区には国際的に通用する膀胱機能検査設備が他にありません。従って佐久病院や浅間病院など、他院から検査を依頼されることがしばしばあります。また、信州大学からも患者さんの紹介を頂きます。佐久地域にお住まいで、脊髄損傷や小児の先天性疾患により厳密な排尿管理を必要とする、これまで信州大学に通院していたような方です。検査をしても稼ぎにはなりませんが、大きな病院から仕事を依頼されるということは、個人医院としては採算度外視で誇らしいことです。

理由その4 看護師が勉強する
大学病院をはじめとした大きな病院から患者さんを頼まれれば、スタッフは張り切らざるを得ません。私が言わなくてもよく勉強していると思います。泌尿器科医師の中でも膀胱機能検査を理論的に理解できる人はそう多くはありません。排尿障害に関していえば、当クリニックの看護師の知識は泌尿器科医と比較しても決して低くはないと思います。

理由その5 クリニックの雰囲気が変わる
人は自分で勉強することによりプライドが生まれてきます。「プライド」とは、自分を磨く上で大事なモチベーションと考えます。看護師に芽生えたプライド意識は事務員にも伝わります。結果として当クリニックは、全ての職員が自分なりに患者さんにしてあげられることを考える、良いサイクルに入っていると感じています。

 そういったわけで、木曜午後は採算度外視で膀胱機能検査をちまちまやっています。これまで検査を行った患者さんは、年齢層が低い順に・・・  腎盂腎炎を繰り返す生後間もない乳児、先天性の神経疾患がありそうなおねしょの子供、脊髄損傷で厳密な排尿管理が命に直結する方、咳をする度に尿が漏れる女性、尿が我慢できなくて漏れてしまう方、尿の出が悪いのに前立腺肥大ではなく原因不明といわれた男性 等々です。おねしょや腎盂腎炎をはじめとした小児泌尿器科疾患と膀胱機能検査の関係については、別の機会に説明したいと思います。

 余談ですが、腹部超音波検査でクリニックが得られる料金は1回5300円。500万円の設備投資をして1人の検査に1時間かかる膀胱機能検査と大差ありません。医療も経済活動です。小児科医が減っているように、(手間の掛かる)膀胱機能検査をする泌尿器科医も減っていくのかもしれません。



posted by クランベリー at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | Dr.さとうから | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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